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その手荒れ、「体質」じゃないかもしれません

2026-10-14

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その手荒れ、「体質」じゃないかもしれません

ジャカランダが咲き始め、春にうつろうブリスベンも、朝晩はまだ空気が乾きますね。この時期になると、「手のひらや指先がカサカサして、ひび割れて痛い」というご相談が増えてきます。特に多いのが、カフェやレストラン、お寿司屋さんなどの飲食店で働いている留学生さんやワーホリさんです。「日本にいた時はこんなに荒れなかったのに」「自分の体質だと思って諦めていました」とおっしゃる方も少なくありません。

でも、手荒れは体質だけの問題ではありません。実は、飲食・ケータリング業界で起こる皮膚トラブルの55%は、水・石けん・洗剤に触れることが原因で、さらに40%は食材そのものに触れることで起こっていると報告されています。飲食業で新しく手の皮膚炎になる人の数は、他の業種の平均の約2倍。つまり、あなたの皮膚が弱いのではなく、お仕事の環境がそうさせている可能性があります。同じようなことは、毎日の家事で水を使う方にも起こります。

「1日20回の手洗い」は、もう立派な水仕事です

医学的には、1日のうち皮膚が濡れている時間が合計2時間を超える、または1日に20回以上手を洗う仕事を「水仕事(ウェットワーク)」と呼びます。飲食店で働いていれば、食品衛生のルール上どうしても手洗いの回数は増えますよね。ランチのピーク時を思い返すと、20回はあっという間ではないでしょうか。

私たちの皮膚のいちばん外側(角質層)は、ばい菌やアレルギーの原因物質が入ってこないようにする「バリア」の役割をしています。繰り返しの手洗いや洗剤に触れることによって、皮膚本来の油分が失われ、皮膚のバリア機能が弱まることがあります。例えば仕事中に何度も手洗いすることがあれば、バリアが修復する時間もありません。さらに、ずっと濡れてふやけた状態でも、逆にカラカラに乾いた状態でも、バリア力は落ちてしまいます。

手荒れにもいくつか種類があります

ひとことで「手荒れ」と言っても、原因はひとつではありません。

刺激性接触皮膚炎

刺激性接触皮膚炎は、いちばんよくあるタイプです。水や洗剤、食材の汁などによるダメージが、皮膚が自分で治せる限界を超えたときに起こります。乾燥・ひび割れ・皮むけのこともあれば、赤み・腫れ・水ぶくれ・じゅくじゅくになることもあります。触れた場所(多くは手)に限られるのが特徴で、刺激物に触れる時間を減らせばリスクは下がります。

アレルギー性接触皮膚炎

アレルギー性接触皮膚炎は、特定の物質にアレルギーがある人だけに起こる免疫の反応です。見た目は刺激性とそっくりですが、何年も平気だったものに突然反応し始めることがあり、いったん体が覚えてしまうと、ごくわずかに触れただけでも症状が出ます。飲食の現場で多いのはニッケルで、指輪や腕時計のほか、酸性の食材や水に触れたステンレスの器具からも溶け出します。ゴム手袋の材料や食品保存料、香料も原因になります。

接触蕁麻疹(じんましん)

接触蕁麻疹(じんましん)は、触れて数分から1時間以内にかゆみのある膨らみが出て、たいてい24時間以内に消えるタイプです。エビ・カニ、キウイ、バナナ、小麦粉、生肉のような生の食材や乳製品などで起こります。また、天然ゴム(ラテックス)の手袋でも起こります。

手袋は「つけっぱなし」がいちばんよくありません

手袋は刺激物から手を守ってくれますが、長時間つけっぱなしにすると中で汗をかき、ふやけて、かえって皮膚炎の原因になります。一度に長時間(30分など)続けて着けないのが目安で、可能なときに手袋を外すか交換し、手をしっかり乾かすことが重要です。

その他にも、自分用の手袋を用意し、他人と共用しないこと、着けるときは必ず清潔で完全に乾いた手に付けることなど気を付ける点があります。素材は、天然ゴムよりアレルギーを起こしにくいニトリル、ビニール、ポリエチレンを選びましょう。可能なら白い綿の手袋を内側に重ねると快適です。食品を扱うときは使い捨て、掃除には再利用できるものと、作業ごとに分けてください。

今日からできる手肌ケア

  • 極端に熱い(又は冷たい)温度の水を使わない
  • 洗ったあとは、やわらかいタオルやペーパーで完全に乾かす。指先、指の間、手首を特に念入りに
  • 無香料の保湿クリームをこまめに。特に勤務前と勤務後は必ず。ここでも指先・指の間・手首を忘れずに
  • 勤務中は指輪や腕時計を外す(下に刺激物が溜まって悪化します)
  • 刻む・混ぜる作業は器具やフードプロセッサーを使い、食材に直接触れる回数を減らす
  • 食器は可能なら食洗機に任せる。汚れた洗い桶の水に手を入れない
  • 洗剤や消毒剤は、メーカーの指示に従って必要であれば薄めてから使用する
  • もし可能なら、手荒れが悪化している間は水仕事から離れる時間を設けられるか、上司に相談してみる

こんなときは早めにご相談ください

  • 保湿しても2週間以上よくならない、または悪化している
  • ひび割れから出血したり、痛くて仕事に支障が出ている
  • 赤みや痛み、腫れがある。または、膿が出ていたり、じゅくじゅくしている(細菌感染を起こしている可能性があります)
  • 爪のまわりが繰り返し腫れる
  • 特定の食材や手袋に触れたあと、数分でかゆみや膨らみが出る
  • 手だけでなく顔や首にも症状が出る

細菌感染を起こした状態で食品を扱うと、食材を汚染してしまう恐れがあるため、治るまでお休みが必要になることもあります。アレルギーが疑われる場合は、パッチテストなどで原因を特定できることもあります。原因がわかれば、それを避けることが何よりの治療になります。

手荒れは「我慢するもの」ではありません。放っておくと慢性化して治りにくくなりますので、気になる方はお早めに当院までご相談ください。

加藤正人医師

Dr Masato Kato

加藤正人医師

MBBS, PhD, Dip Child Health, FRACGP

愛知県名古屋市出身。名古屋大学で大学理学部生化学科博士課程を卒業後渡米し、スタンフォード大学、ハーバード大学で新生児医療の分野における医療研究者として活躍。その後アメリカからニュージーランドに拠点を移し、1999 年に家族でブリスベンに移住。マーター病院での研究職を経て、クイーンズランド大学医学部でオーストラリアの医師免許を取得。小児科専門研修の後に GP 専門医に転向しました。 長年の国際的な医療研究で培った知見と、小児科を含む臨床経験を兼ね備えた医師として、幅広い世代の診療を行っております。GP としての一般診療に加え、小児科、筋骨格系治療、男性医療(泌尿器系)、メンタルヘルス、皮膚科、小手術などの分野にも力を入れています。 また、筋肉や関節、靭帯などの慢性的な痛みに対する筋骨格医療を専門とし、プロロセラピーやペリニューラルセラピーなどの治療法を取り入れています。