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マイノリティーのクリニックにおける、海外でのDV被害についての取り組み
2025-09-26
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診察の際のパートナーの付き添いについて
オーストラリアにおいては日本人はマイノリティーです。日本人女性がワーホリや留学でオーストラリアに来て、現地で出会ったパートナーと一緒になるケースは、私や当院スタッフを含めてとても多いです。もちろん上手くいっている家庭も多くありますが、そうでないケースも同じくらいあります。国際恋愛や国際結婚においては、パートナーの母国に住む女性にDVやハラスメントなどの問題が起きるリスクは通常の対等な関係よりもとても高く、離婚率の高さやDVやハラスメントの多さが問題視されています。
DVの本質は、加害者が相手の自由や権利を奪い、支配する行動パターンにあります。このことを示す概念が「強圧的コントロール(coercive control)」です。近年になってようやく、精神的DV、モラハラ、強圧的コントロール(coercive control)は深刻な問題かつ重大な犯罪であると社会的にも認められるようになりました。私たちの住むクイーンズランド州では2025年5月より、強圧的コントロールは犯罪であるという法律が施行されています。
言葉や文化も違い、家族も友人とも離れて暮らす海外での生活においては、精神的DVは外からは分かりづらい場合も多く、見落とされがちです。中には、自分がDV被害者であるという自覚症状のないケースも多くあります。母国語で自由に話せる当院クリニックでの診察は、そういったケースを発見できる数少ない機会でもあります。
当院では、社会的に弱い立場的にある、異国に暮らす女性を多く診察しています。患者さんの中には、自覚のあるなしに関わらず、DVの被害者が来られることもあります。そのような方々をサポートしていくのが、私たちスタッフの願いです。
このような背景を踏まえた上で、当院での診察の際は、基本的にはパートナーの方の診察室への同伴はご遠慮していただいております。患者さんがパートナーの同伴を希望される場合は、まずは患者さんのみ入室していただき、医師が患者さんご自身による同意をしっかりと確認した上で、改めてパートナーの方を診察室にお呼びいたします。なお、スタッフや患者さんに対して威圧的な態度を取るパートナーの方については、スタッフや患者さんの安全のために、診察時の同席をお断りする場合もあります。ご理解いただけますと幸いです。

Dr Mayumi Yoshida
吉田まゆみ医師 🇦🇺 🇯🇵 🇺🇸 🇬🇧
MBBS, BMedSci, MRCGP, DFSRH (UK), FRACGP (Australia), ECFMG(USA)
福岡県福岡市出身。16才の時に渡英。2003 年に英国ノッティンガム大学医学部を卒業、イギリスの医師免許を取得。2007年にアメリカの医師免許資格(ECFMG Certificate)を取得。2014年に英国オックスフォードで総合診療医/GP課程を修了、イギリスとオーストラリア両国のGP資格を保持する。2024年に日本の医師国家試験に合格し、現在イギリス、アメリカ、オーストラリア、日本の4か国における医師国家資格を有する。