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オーストラリアに滞在中の12-26歳未満の日本人と中高生、留学生、ワーホリさんのご両親にぜひ知ってほしいこと
2025-06-06
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男性への子宮頸がん(HPVガーダシル9価)ワクチン接種について
オーストラリアの子供たちは皆、男女ともに7年生の時に学校でHPV9価ワクチンの集団接種を受けます。ワクチン接種の進んだオーストラリアでは子宮頸がんが大幅に減少しており、このままいけば2035年には撲滅宣言が出来る予定だそうです。以前は日本と同様に3回接種だったのですが、現在は12-25歳の若者については1回のみの接種でよいことになっています。医学的な研究の結果に基づき、若者については1回のみの接種で2,3回と変わらない高い予防効果があると証明されているからです。そして、この1回のHPV9価ワクチン接種は、オーストラリアに住んでいる26歳以下の男女に対して、政府からの公費での接種が可能です。
WHO (世界保健機関)は、女性だけでなく男性へのHPVワクチン接種も推奨しています。これは、HPV感染が性病であり、性交渉で男性から女性に感染することで子宮頸がんを引き起こすことがあるためです。男性もワクチン接種することで、HPV感染の予防に繋がり、結果として女性の子宮頸がん予防にもつながります。また、HPVは子宮頚がんだけでなく、性病いぼや、咽頭(のど)や肛門、陰茎などのがんの原因となることも分かっています。
さくらファミリークリニックは、日本人を対象としたクリニックではありますが、最近は口コミで多くの中国人、台湾人の留学生さんやワーホリさんが男女ともにHPV9価ワクチン(ガーダシル9)の注射を受けに来られています。自分の国では入手が困難で高額なワクチンを公費で打ってもらえるので、みなさんとても喜んでおられます。中国語のSNS(小紅书)ではオーストラリアでの接種報告とお勧めが多く投稿されているようです。昔からそうですが、華僑のネットワークはさすがだと思うし、中国人の若者の情報収集能力の高さには感心します。話を聞くと、注射は怖いし嫌だけれど、将来を考えてがんの予防のためにきちんとHPVワクチン接種を受けておきたいという意識が男女ともに共有されているようです。公費対象外の旅行者の方でも、自費で300ドル払ってでも接種を受けたいと希望される方が多くいます。
それとは対照的に、日本人の場合は、若い女性がごくたまに接種の相談に来るくらいで、男性がワクチン接種に来ることはほぼありません。同年代のアジアの若者達のこの行動格差には医療従事者として愕然とするほどです。推測するに、子宮頸がんワクチンについては、日本では、以前にまれな副作用とされる問題がメディアで大きく報じられ懸念されていたために、HPVのワクチン接種が海外と比べてかなり出遅れており、まだまだ接種の必要性への認知が男女ともにとても低いことが原因のようです。ちなみに、この極まれな副作用とされている症状についてはHPVワクチン接種とは医学的に関連性が証明されていませんが、HPVワクチンが癌を予防するという医学的根拠はしっかりと確立されたものであり、risk/benefit評価で総合的に判断すると、大金を払ってでも若者はHPVワクチン接種は受けた方が良いというところに落ち着くことになります。
話に聞くところ、日本では未だに2価や4価のワクチンが出回っており、公費で無料接種できるのは女性だけだそうです。そして男性については4価ワクチンを有料で3回受けるしか選択肢はないようです。
日本の若い男性も、オーストラリアではせっかく公費でHPV9価ワクチンが受けられるとても良い機会ということで、自分のため、そして将来のパートナーを守るためにも、こちらに住んでいる間にぜひ接種を検討していただきたいと切実に思っています。

Dr Mayumi Yoshida
吉田まゆみ医師 🇦🇺 🇯🇵 🇺🇸 🇬🇧
MBBS, BMedSci, MRCGP, DFSRH (UK), FRACGP (Australia), ECFMG(USA)
福岡県福岡市出身。16才の時に渡英。2003 年に英国ノッティンガム大学医学部を卒業、イギリスの医師免許を取得。2007年にアメリカの医師免許資格(ECFMG Certificate)を取得。2014年に英国オックスフォードで総合診療医/GP課程を修了、イギリスとオーストラリア両国のGP資格を保持する。2024年に日本の医師国家試験に合格し、現在イギリス、アメリカ、オーストラリア、日本の4か国における医師国家資格を有する。