ブログ
-
オーストラリアの子宮頸がん検診 セルフキットを使う場合
2024-11-15
#オーストラリアの医療情報 #ブログ
オーストラリアでは、子宮頸がん検診は25歳以上の性行為の経験がある女性に勧められています。25歳以下の子宮頸がんはとても稀なためです。
検査の際のオプションとして、自分で膣のサンプルを取るセルフキットを使うという選択肢もあります。この検査は簡単で、精度も高く、とても便利です。自分で検査をするということで、プライバシーも守られ、医師による内診、器具の挿入もなく不快感も軽減されるため、このオプションを選ぶ患者さんも多いです。ただし、セルフキットでの検査は無症状かつ今までの検診に引っかかったことがない場合のみに勧められているものです。
セルフキットでは膣にウイルスがいるかどうかの検査しかできないので、子宮頸部の細胞の変化をチェックをすることはできません。セルフキットで子宮頸がんにつながる細胞の変化を引き起こす性病ウイルス(ヒトパピローマウイルス)が見つかった場合は、医師による細胞診で再度詳しく調べていくことになります。セルフキットによる検査でウイルスが陰性だった場合は、次の検査は5年後でよいとされています。
異形成やがん細胞がいるかどうかの検査は、医師による子宮頚の細胞のサンプルの摂取が必要になります。以前に異形成があった場合や、おりものや不正出血、性交痛、性交後の出血などの症状がある場合にはセルフキットでは不十分です。悪性の細胞を見逃してしまう可能性もありますので、必ず医師の内診による子宮頸がん検診を受けてください。
男性医師によるプライベートな検査を受けるのに抵抗がある場合には、女性のスタッフの同席(シャペロン Chaperone)を頼んだり、女性医師での診察をお願いするようにしましょう。
続きを読む
-
ピルについて よくある質問Q+A
2024-10-05
#ブログ
ピルは、避妊目的以外でも、生理痛、月経過多、PMSやニキビなどの治療に使われています。ピルを飲む方は最近は日本でも増えてきています。オーストラリアではピルは安価で買うことが出来るので、こちらに来てから飲み始める方も多いです。今回は一般的なピル、オーストラリアの国内市場で一番よく流通しているスタンダードなCOC (Combined Contraceptive Pill) の服用方法についてお話ししたいと思います。
ピルの飲み方は?
シート左下の、Start in the green (red) section 緑(赤)のところから飲み始めましょう。生理が来てから(妊娠していないことを確認した上で)、曜日を合わせて飲み始めます。朝昼晩、食前食後いつでもいいので、自分が一番確実に飲めそうな時間を決めて、携帯のアラームを設定して、毎日同じ時間に飲んでください。飲み始める曜日によっては偽薬から始める場合もあるし、ホルモンが入っているピルから入る場合もありますが、どちらでも大丈夫です。一日に一個ずつ飲んでいきましょう。
ホルモンが入っている色つきのピルを飲んでいる間は出血しませんが、飲み忘れたり、白色(もしくは違う色)のシュガーピル(何にも入っていない、休薬期間のための偽薬です)を飲むころになると数日で出血します。基本的には、出血の有無にかかわらず、毎日曜日通りに一錠ずつ飲んでもらえれば問題ありません。偽薬には何の効果もないため忘れても飲まなくても大丈夫ですが、毎日の服用習慣をつけるためには飲んでおいた方が良いでしょう。
ピルを飲み忘れたら?
おそらく出血します。出血の有無にかかわらず、思い出した時点で1錠、次の日からはいつもの時間に1錠ずつ飲んでください。飲み忘れた分は捨ててください。避妊効果がなくなる場合もあるので、次の7日間は必ずコンドームを使ってください。
副作用は大丈夫?
全くなにもなかった、という方も多いですが、特に飲み始めの一週間は、吐き気やむくみ、胸のはりなどの副作用が出る方もいます。多くの場合は副作用は一週間くらいでに落ち着いていくので、我慢できるようであればしばらく続けてみてください。しばらく飲んでみても副作用が気になる場合は、他の種類のピルもたくさんあるので、違うピルに代えてもらうのもよいかと思います。
ゴムとの併用は必要?
避妊目的でピルを飲んでいる場合でも、飲み忘れ、吐き気や下痢、抗生物質との併用などで避妊効果がなくなる場合もあります。ピルだけだと性病のリスクもあります。出来るだけコンドームと併用するように心がけてください。ピルの避妊率は97%、ゴムだけだと70-80%と言われています。ピルとコンドームを併用していけば、妊娠のリスクはほぼなくなります。望まない妊娠や、性病を予防するために、コンドームはしっかり使うようにしましょう。
生理をずらしたい場合は?
旅行などに生理の予定日が重なってしまってずらしたい場合、偽薬を飲まずにスキップすることで、次の生理を遅らせることが出来ます。6週間ホルモンが入っているピルを飲み続けていれば、おそらくその期間には出血はありません。
リスクはある?
COCピルを飲んでいる人と飲んでない人を比べた場合、ほんの少しだけ、飲んでいる人の方が発症しやすいとされているのが、血栓症と乳がんです。煙草は吸わないこと、しっかり水分補給をすること、月に一度自分で乳房のセルフチェックをすること、などでリスクを減らしていきましょう。片足のふくらはぎが腫れていたくなったり、胸のしこりが気になる場合はすぐに病院を受診してください。COCピルの場合は超低用量と謳われていてもリスクはゼロではありません。
飲めない場合は?
高血圧や糖尿病、乳がん、肥満、片頭痛などの持病があったり、喫煙や年齢が高めだったりする場合は、上記リスク等を考慮してCOCピルを飲むのに適さないと判断される場合もあります。そういう方にはリスクのない、より安全なピルPOP(Progesteron only Pill)が勧められます。このピルは授乳中の方も飲めます。また、どうしてもピルをよく飲み忘れてしまう方には、インプラントやミレーナコイルが勧められるケースもあります。
最後に
ブリスベンのさくらファミリークリニックでは、オーストラリアで日本語での診察とピル処方を行っています。オンラインでの診察も可能です。オーストラリアにはたくさんのピルが市場に出回っていますが、ピルのお値段はひと月3ドルから80ドルとまちまちです。医師に相談の上、自分に適したピルを飲むことで、体調の改善と望まない妊娠を避けることが出来ます。みなさんがオーストラリアで快適な毎日を過ごせるようにお手伝いができればと思っています。お気軽にご相談ください。
続きを読む
-
オーストラリアでの小児予防接種と乳幼児健診について
2024-09-21
#ブログ
オーストラリアでは、小児ワクチン接種と健診は生後6週間、4か月、6か月、12か月、18か月と4歳で受けることになっています。
お子さんが日本で出国時に日本の定期予防接種を完了していても、オーストラリアで追加接種を受ける必要があることも多いです。推奨される接種の時期と間隔は国によって異なるので、オーストラリアで生活していく場合はこちらのルールに沿って必要な接種を受けていくことになります。例えば、オーストラリアの子供たちは、日本では打たないACWY髄膜炎の接種を12か月で受けています。日本では年長さんで受けるMMRの2回目はこちらでは18か月での接種になります。
また、日本への帰国を予定している場合は、オーストラリアでは定期接種に入っていない、日本帰国時に接種しておいた方が良いワクチンもあります。BCGや日本脳炎などがその例です( 詳細はこちらの記事をご確認ください)。GPクリニックでの診察の際に、母子手帳の接種記録欄を医師や看護師と確認していきましょう。
オーストラリアでは、(アメリカやイギリス、ヨーロッパなど日本以外の主な諸外国も同じです)赤ちゃんの定期予防接種は基本的に筋肉注射です。12か月までの赤ちゃんには、筋肉の量が多く痛みが少ないとされる両足の太ももに打つことになっています。
日本でも、10年以上前から日本でも小児科学会は太ももへの接種を推奨しています。日本の予防接種は皮下注射が主流なので、一昔前までは赤ちゃんの腕に皮下注射を打つこともあったそうです。ちなみに、現在は複数のワクチンの同時接種も全く問題ないとされています。
特に、クイーンズランド州で最近始まったQLD州政府によるB型髄膜炎の予防接種(メディケア国民保険をお持ちの方のみ対象です)については、熱や腫れなどの副作用が強いため、左太ももへの筋肉注射をするように指示が出ています。また、他のワクチンと同じ足に同時に打たないことや、接種前後にPanadolなどの解熱剤を飲ませることも強く推奨されています。
大切な赤ちゃんを命に関わる病気から守っていくために、ワクチン接種は非常に重要なことです。接種時には同時に乳児検診を行い、身長、体重、頭囲をグラフに記録して、赤ちゃんの成長や発達に問題がないかどうかを毎回経過観察としてしっかり診ていきます。また、オーストラリアのGPでは、乳児検診と同じタイミングで、出産後のお母さんの経過観察、避妊、体調管理やメンタルヘルスなどについてもフォローアップしてもらえます。ホルモンバランスが乱れている産後のお母さんには、産後うつのリスクがあります。海外での慣れない子育て、睡眠不足、ストレスだらけの色々と辛いこの時期をサポートするのもGPの大切な役目です。
予防接種のタイミング以外でも、赤ちゃんのことやご自身のことで気になる点があればいつでもお気軽にご相談ください。
続きを読む
-
オーストラリア、ブリスベンでの妊娠、出産について
2024-08-31
#オーストラリアの医療情報 #ブログ
オーストラリアでは、ご加入の保険によって、妊婦検診、出産のシステムが違います。まずは、お持ちの保険が妊娠出産をカバーできるかどうかを確認しましょう。妊娠が分かった時点で、お近くのGPでの診察予約を取ってください。服用しているお薬がある場合は、続けて飲んでもよいかをGPに確認してください。
予期せぬ妊娠で、妊娠の継続を望まない場合は、9週までであればお薬での中絶、それ以降では手術を受けることになります。迷っている場合もまずはGPに相談してください。
妊娠をカバーする保険に入っていない場合は、日本での出産を前提に、万が一のことを考えて、24週前には帰国することをお勧めいたします。24週以降で早産になってしまった場合、未熟児の集中治療室での治療費はとてつもなく高額になるためです。帰国前の診察の際には、日本の産婦人科への紹介状をお出しいたします。
メディケアをお持ちの場合や妊娠がカバーされる学生保険が使える場合は、最寄りの公共病院での妊婦検診、出産になります。GPと病院で情報を共有しながら、交互に検診をすることも可能です。経過が順調な場合は、助産師さんが検診、出産を担当します。産科医はシフト制で入っており、難しいケースに対応します。医師の指定は出来ませんが、チームでしっかりと引継ぎをして回しているので問題ありません。英語に不安がある場合は、日本語の通訳さんもお願いできます。
妊娠出産もカバーしているプライベートの保険に加入している場合は、ご自身でかかりつけの産科医を選ぶことが出来ます。現地の友人や知人からお勧めの産科医を教えてもらうのもよいかと思います。GPにお勧めの産科医を聞いてみることもできます。当院では主にMater Mothers Private Hospitalの産婦人科専門医をご紹介しています。GPは、これまでの経過と検査結果を含めた紹介状を、8週から16週の間に専門医に送ります。紹介を受けた専門医はその後の経過についてGPにレターでお知らせしてくれます。最初に紹介してもらった先生の出産予約が取れなかったり、何となく合わなくてやっぱり他の先生に診てもらいたい場合は、他の先生への紹介状をお願いしてみましょう。
プライベートの産科医を選んだ場合は妊娠の定期検診は個人のクリニックに行ってもらうことになりますが、出産時には大きな総合病院での出産になります。個人のクリニックは総合病院の近くに点在しています。総合病院ではかかりつけ医以外にも医師と助産師のチームが24時間対応しており、手術室も分娩室もたくさんあります。出産の際には、新生児に対応できる小児専門医チームもすぐにかけつけてくれるのでとても安心です。夜勤も当直もきちんと交代制なので、産婦人科医が不足している日本での出産よりもしっかりした安全な体制が取れていると感じます。
Mater Private Hospital 産科医リスト https://www.matermothers.org.au/hospitals/meet-our-obstetricians/our-obstetricians?show=t&txt=&del=&gen=&opt=&lang=
続きを読む
-
オーストラリアでの子宮頸がんワクチン無料接種について
2024-08-25
#オーストラリアの医療情報 #ブログ
オーストラリアに住んでいる12歳から25歳までの若者(男女ともです!)は、子宮頸がんワクチン(Gardasil 9)をGPクリニックで接種することが可能となっています。オーストラリア在住者の方へのワクチンは政府からの公費で補助されるため、ワクチン費用は無料となり、自己負担は診察費のみです。最新のデータを元に国の推奨方針が最近アップデートされ、この年齢層の方の子宮頸がんワクチン接種は1回のみで完了ということになりました。
25歳以上の方がプライベートでの子宮頸がんワクチン接種を希望する場合、ワクチンをご自身で購入する必要があります。自己負担額は1本につき$250ほどで、6か月間に3回の接種が必要です。合計$750プラス診察費用がかかります。
日本でもようやく近年になって子宮頸がんのワクチン接種が推奨されるようになってきましたが、対象期間を過ぎると全額自己負担となり、公費の補助がない場合の接種費用は、3回接種で約8~10万円ほどかかるようです。子宮頸がんを引き起こすヒトパピロマウイルスは男女ともにかかる性病ウイルスなのですが、日本ではまだ接種の対象は女性のみとなっています。
子宮頸がんはヒトパピロマウイルスの性感染症による細胞の変化によって引き起こされる病気です。性交渉前に男女ともに子宮頸がんワクチンを受けておくことで、将来自身や大切な人が子宮頸がんや性病によるいぼなどにかかるリスクを大幅に減らすことが出来ます。日本では現在も多くの女性が子宮頸がんにかかっていますが、ワクチン接種が進んでいるオーストラリアでは、2035年までに子宮頸がんを撲滅させる計画が達成される見通しです。
オーストラリアに滞在中のワーホリさんや学生さんでまだ子宮頸がんワクチンを受けていない方は、ぜひこの機会にクリニックでのワクチン接種をご検討ください。
続きを読む