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  • 貧血のおはなし 「貧血になった」という日本語表現には気を付けて

    2024-12-16

    #ブログ

    貧血のおはなし 「貧血になった」という日本語表現には気を付けて

    毎月生理がある女性にとっては、鉄欠乏性貧血はとても身近な問題です。疲れ、気分の落ち込み、動悸、息切れ、めまいや立ち眩みなどの症状でクリニックに来られる患者さんは数多くいらっしゃいます。日本語では立ち眩みの症状を指して「貧血になった」、ということが多いですが、これは外国では誤解されるので気を付けましょう。医療現場においての貧血 (anaemia) とは、血液中のヘモグロビンの数値が低いことを指し、血液検査で診断されます。日本語で巷でよく使われる、「貧血になった」、「貧血で倒れた」、というのは立ち眩みや失神の症状(dizzy spells/syncope)を表すものですので、これは必ずしも医学用語である貧血=ヘモグロビンの低値=anaemiaが原因とは限りません。こちらのGPに貧血で倒れたんだけど、と相談すると、血液検査もしていないのにどういうことだろう?と不思議な顔をされるのは、上記の理由によるものです。

    ワーホリさんや学生さんの中でも、オーストラリアに来てから生活環境の変化で生理が重くなったり、食費の節約や無理なダイエットで食生活が偏ったりすると、鉄欠乏性貧血になってしまうことがよくあります。前述した疲れ、めまいや気分の落ち込み、動悸、立ち眩みなどの症状の他にも、氷をやたらに食べたくなってしまうという変わった症状(氷食症)が出ることもあります。

    鉄欠乏性貧血は、血液検査で簡単に診断がつきますので、気になる方は一度GPクリニックで血液検査をしてみましょう。体の中の鉄分のインプットを増やして、アウトプットを減らすことでバランスを取り、体内の鉄分、ヘモグロビン値を増やしていけば、貧血の症状は改善されます。インプットとしてはほうれん草や牛肉、鉄分のサプリメントを摂取すること、アウトプットではお薬やピルで生理過多をコントロールすることなどで、上手く治療していくことが出来ます。

    鉄分のサプリメントは処方箋なしでも薬局で購入できますが、商品によって錠剤に含まれている鉄の量が違うので、うんちが黒くなるくらいしっかり鉄分が入っているもの(elemental iron > 100mg)を選ぶようにしましょう。鉄分はビタミンCと一緒に摂ることで吸収が良くなるので、鉄分とビタミンCが一緒に入っているFerrograd Cなどがお勧めです。錠剤は食前の服用がベストですが、副作用で気持ち悪くなる場合は食後でも大丈夫ですので、数値が上がるまで毎日しっかり飲み続けていきましょう。

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  • 日本脳炎の海外での小児予防接種について オーストラリアの場合

    2024-11-22

    #オーストラリアの医療情報 #ブログ

    日本脳炎の海外での小児予防接種について オーストラリアの場合

    日本では3歳から受ける日本脳炎の予防接種は、オーストラリアの小児予防接種プログラムには入っていません。こちらに滞在中のご家族からは、日本脳炎のワクチンをオーストラリアで受けることが出来るかというお問い合わせをよくいただきますが、オーストラリアで入手可能な日本脳炎のワクチン(2回接種)は、日本のもの(4回接種)とは別物で、互換性はありません。そのため、当院では日本に帰国の際に接種をするようにご案内しています。

    海外製の日本脳炎ワクチンは、日本で接種されているより安全で有効な国産ワクチンとの 互換性は証明されておらず、打ち直しとなりますのでご注意ください。

    詳細につきましては、こちらの資料をご参照ください。2017年に外務省の福利厚生室より頂いた情報です。

    https://www.meitetsu-hospital.jp/app/wp-content/uploads/2019/12/yobou_144.pdf

    オーストラリアのクリニックで日本脳炎のワクチン接種を受けても、帰国の際にはノーカウントとされ、さらに4回の予防接種が必要となります。こちらでわざわざ高額のワクチン費用と診察費用を払って2回も痛い注射を受けさせる意味はなさそうです。海外では日本で流通している国産ワクチンは入手できないため、日本脳炎のワクチン接種については、日本にご帰国の際に予防接種を受けるようにしましょう。

    ちなみに、結核の予防接種、BCGワクチンは、そのほかの接種スケジュールにある他のワクチンと同様に、日本のものとの互換性が確立されておりますので、オーストラリアで受けても、帰国の際に日本で受けてもらっても大丈夫です。日本では大体9か月頃にスケジュールが組まれておりますが、BCGは生後すぐから受けることが可能です。一時帰国中の受診の可否や金額は各自治体によって異なりますので、詳細につきましては日本の小児科にお問い合わせください。

    小児定期予防接種については、お子様のために信頼できる医師またはウェブサイトから正しい情報を収集した上で、オーストラリアにいる間はこちらのプログラムに沿って、現地の子供達と同じタイミングで定期予防接種を受けていきましょう。

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  • オーストラリアの子宮頸がん検診 セルフキットを使う場合

    2024-11-15

    #オーストラリアの医療情報 #ブログ

    オーストラリアの子宮頸がん検診 セルフキットを使う場合

    オーストラリアでは、子宮頸がん検診は25歳以上の性行為の経験がある女性に勧められています。25歳以下の子宮頸がんはとても稀なためです。

    検査の際のオプションとして、自分で膣のサンプルを取るセルフキットを使うという選択肢もあります。この検査は簡単で、精度も高く、とても便利です。自分で検査をするということで、プライバシーも守られ、医師による内診、器具の挿入もなく不快感も軽減されるため、このオプションを選ぶ患者さんも多いです。ただし、セルフキットでの検査は無症状かつ今までの検診に引っかかったことがない場合のみに勧められているものです。

    セルフキットでは膣にウイルスがいるかどうかの検査しかできないので、子宮頸部の細胞の変化をチェックをすることはできません。セルフキットで子宮頸がんにつながる細胞の変化を引き起こす性病ウイルス(ヒトパピローマウイルス)が見つかった場合は、医師による細胞診で再度詳しく調べていくことになります。セルフキットによる検査でウイルスが陰性だった場合は、次の検査は5年後でよいとされています。

    異形成やがん細胞がいるかどうかの検査は、医師による子宮頚の細胞のサンプルの摂取が必要になります。以前に異形成があった場合や、おりものや不正出血、性交痛、性交後の出血などの症状がある場合にはセルフキットでは不十分です。悪性の細胞を見逃してしまう可能性もありますので、必ず医師の内診による子宮頸がん検診を受けてください。

    男性医師によるプライベートな検査を受けるのに抵抗がある場合には、女性のスタッフの同席(シャペロン Chaperone)を頼んだり、女性医師での診察をお願いするようにしましょう。

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  • ピルについて よくある質問Q+A

    2024-10-05

    #ブログ

    ピルについて よくある質問Q+A

    ピルは、避妊目的以外でも、生理痛、月経過多、PMSやニキビなどの治療に使われています。ピルを飲む方は最近は日本でも増えてきています。オーストラリアではピルは安価で買うことが出来るので、こちらに来てから飲み始める方も多いです。今回は一般的なピル、オーストラリアの国内市場で一番よく流通しているスタンダードなCOC (Combined Contraceptive Pill) の服用方法についてお話ししたいと思います。

    ピルの飲み方は?

    シート左下の、Start in the green (red) section 緑(赤)のところから飲み始めましょう。生理が来てから(妊娠していないことを確認した上で)、曜日を合わせて飲み始めます。朝昼晩、食前食後いつでもいいので、自分が一番確実に飲めそうな時間を決めて、携帯のアラームを設定して、毎日同じ時間に飲んでください。飲み始める曜日によっては偽薬から始める場合もあるし、ホルモンが入っているピルから入る場合もありますが、どちらでも大丈夫です。一日に一個ずつ飲んでいきましょう。

    ホルモンが入っている色つきのピルを飲んでいる間は出血しませんが、飲み忘れたり、白色(もしくは違う色)のシュガーピル(何にも入っていない、休薬期間のための偽薬です)を飲むころになると数日で出血します。基本的には、出血の有無にかかわらず、毎日曜日通りに一錠ずつ飲んでもらえれば問題ありません。偽薬には何の効果もないため忘れても飲まなくても大丈夫ですが、毎日の服用習慣をつけるためには飲んでおいた方が良いでしょう。

    ピルを飲み忘れたら?

    おそらく出血します。出血の有無にかかわらず、思い出した時点で1錠、次の日からはいつもの時間に1錠ずつ飲んでください。飲み忘れた分は捨ててください。避妊効果がなくなる場合もあるので、次の7日間は必ずコンドームを使ってください。

    副作用は大丈夫?

    全くなにもなかった、という方も多いですが、特に飲み始めの一週間は、吐き気やむくみ、胸のはりなどの副作用が出る方もいます。多くの場合は副作用は一週間くらいでに落ち着いていくので、我慢できるようであればしばらく続けてみてください。しばらく飲んでみても副作用が気になる場合は、他の種類のピルもたくさんあるので、違うピルに代えてもらうのもよいかと思います。

    ゴムとの併用は必要?

    避妊目的でピルを飲んでいる場合でも、飲み忘れ、吐き気や下痢、抗生物質との併用などで避妊効果がなくなる場合もあります。ピルだけだと性病のリスクもあります。出来るだけコンドームと併用するように心がけてください。ピルの避妊率は97%、ゴムだけだと70-80%と言われています。ピルとコンドームを併用していけば、妊娠のリスクはほぼなくなります。望まない妊娠や、性病を予防するために、コンドームはしっかり使うようにしましょう。

    生理をずらしたい場合は?

    旅行などに生理の予定日が重なってしまってずらしたい場合、偽薬を飲まずにスキップすることで、次の生理を遅らせることが出来ます。6週間ホルモンが入っているピルを飲み続けていれば、おそらくその期間には出血はありません。

    リスクはある?

    COCピルを飲んでいる人と飲んでない人を比べた場合、ほんの少しだけ、飲んでいる人の方が発症しやすいとされているのが、血栓症と乳がんです。煙草は吸わないこと、しっかり水分補給をすること、月に一度自分で乳房のセルフチェックをすること、などでリスクを減らしていきましょう。片足のふくらはぎが腫れていたくなったり、胸のしこりが気になる場合はすぐに病院を受診してください。COCピルの場合は超低用量と謳われていてもリスクはゼロではありません。

    飲めない場合は?

    高血圧や糖尿病、乳がん、肥満、片頭痛などの持病があったり、喫煙や年齢が高めだったりする場合は、上記リスク等を考慮してCOCピルを飲むのに適さないと判断される場合もあります。そういう方にはリスクのない、より安全なピルPOP(Progesteron only Pill)が勧められます。このピルは授乳中の方も飲めます。また、どうしてもピルをよく飲み忘れてしまう方には、インプラントやミレーナコイルが勧められるケースもあります。

    最後に

    ブリスベンのさくらファミリークリニックでは、オーストラリアで日本語での診察とピル処方を行っています。オンラインでの診察も可能です。オーストラリアにはたくさんのピルが市場に出回っていますが、ピルのお値段はひと月3ドルから80ドルとまちまちです。医師に相談の上、自分に適したピルを飲むことで、体調の改善と望まない妊娠を避けることが出来ます。みなさんがオーストラリアで快適な毎日を過ごせるようにお手伝いができればと思っています。お気軽にご相談ください。

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  • オーストラリアでの小児予防接種と乳幼児健診について

    2024-09-21

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    オーストラリアでの小児予防接種と乳幼児健診について

    オーストラリアでは、小児ワクチン接種と健診は生後6週間、4か月、6か月、12か月、18か月と4歳で受けることになっています。

    お子さんが日本で出国時に日本の定期予防接種を完了していても、オーストラリアで追加接種を受ける必要があることも多いです。推奨される接種の時期と間隔は国によって異なるので、オーストラリアで生活していく場合はこちらのルールに沿って必要な接種を受けていくことになります。例えば、オーストラリアの子供たちは、日本では打たないACWY髄膜炎の接種を12か月で受けています。日本では年長さんで受けるMMRの2回目はこちらでは18か月での接種になります。

    また、日本への帰国を予定している場合は、オーストラリアでは定期接種に入っていない、日本帰国時に接種しておいた方が良いワクチンもあります。BCGや日本脳炎などがその例です( 詳細はこちらの記事をご確認ください)。GPクリニックでの診察の際に、母子手帳の接種記録欄を医師や看護師と確認していきましょう。

    オーストラリアでは、(アメリカやイギリス、ヨーロッパなど日本以外の主な諸外国も同じです)赤ちゃんの定期予防接種は基本的に筋肉注射です。12か月までの赤ちゃんには、筋肉の量が多く痛みが少ないとされる両足の太ももに打つことになっています。

    日本でも、10年以上前から日本でも小児科学会は太ももへの接種を推奨しています。日本の予防接種は皮下注射が主流なので、一昔前までは赤ちゃんの腕に皮下注射を打つこともあったそうです。ちなみに、現在は複数のワクチンの同時接種も全く問題ないとされています。

    特に、クイーンズランド州で最近始まったQLD州政府によるB型髄膜炎の予防接種(メディケア国民保険をお持ちの方のみ対象です)については、熱や腫れなどの副作用が強いため、左太ももへの筋肉注射をするように指示が出ています。また、他のワクチンと同じ足に同時に打たないことや、接種前後にPanadolなどの解熱剤を飲ませることも強く推奨されています。

    大切な赤ちゃんを命に関わる病気から守っていくために、ワクチン接種は非常に重要なことです。接種時には同時に乳児検診を行い、身長、体重、頭囲をグラフに記録して、赤ちゃんの成長や発達に問題がないかどうかを毎回経過観察としてしっかり診ていきます。また、オーストラリアのGPでは、乳児検診と同じタイミングで、出産後のお母さんの経過観察、避妊、体調管理やメンタルヘルスなどについてもフォローアップしてもらえます。ホルモンバランスが乱れている産後のお母さんには、産後うつのリスクがあります。海外での慣れない子育て、睡眠不足、ストレスだらけの色々と辛いこの時期をサポートするのもGPの大切な役目です。

    予防接種のタイミング以外でも、赤ちゃんのことやご自身のことで気になる点があればいつでもお気軽にご相談ください。

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